第1663話 ■郷土で巨人戦

 当コラムの記念すべき第1話は「電車がないということ」に始まり、都会に住む人々へ「電車」という視点から私が生まれ育った田舎の生活ぶりを紹介してみた。電車が全くないというわけではなく、それはよそ行きの乗り物であって、ほとんどの人は電車に乗るということが日常の生活の中に組み込まれていない旨を書いている。

 そんな中、我が郷土佐賀にプロ野球(一軍)の公式戦が数年ぶりにやってきて、しかも初の巨人戦ということで田舎特有の現象が起きたらしい。その会場となる県営の球場は通常高校野球の県予選を行うような球場である。畑の中にぽつんとあって、電車の駅からも遠い。だから、野球を見に来た人は普通のように自家用車で駆け付け、周辺道路は大渋滞になったらしい。

 基本的に彼らの日常の移動手段は車である。また、多くの人が集まるようなイベントに慣れていない人々だ。地元の開催関係者も経験がないわけだから、準備やその発想も十分でなかろう。そこに多くの人が自家用車で押しかけ、渋滞騒ぎである。自動車での移動が欠かせないが、人口が少ないので、そもそも道路環境が弱い。

 これが都会となると、球場の近くには駅があって、電車で行くことが基本となっている。また、駅から遠いサッカー場のような場合は最寄の駅から直行バスで大人数を移送している。ところが田舎では直行バスの発着所になるであろう駅すら生活の枠組に組み込まれていないため、各々が車でやってくるのだ。

 球場の収容人数は1万数千人。人口が20万人程度の市である。球場に空席が目立ったら恥ずかしいなあ、と思っていたら、何とか席は埋まって、それらしい体裁にはなっていた。ほとんどが巨人ファンだと思われる。これまた、田舎だからしょうがない。ただその映像をBS放送(しかも私の場合は録画)で見る限り、音声が貧弱というか、妙に安っぽい試合中継に見えた。いつもテレビ中継で見ていたような、おきまりの観客席からの応援がないせいだろう。

 さて、私は明日、東京ドームで巨人戦を観戦することにしている。

(秀)