第330話 ■きっかけ

 暁仁太郎は元売れっ子の俳優だったが、今は死体の役に甘んじているような役者である。しかし、ある因縁で富増村に弁護士として乗り込むことになった。「合言葉は勇気」で役所広司はこんな人物を好演している。廃棄物処理問題で富増村はもめている。村民は廃棄物処理業者を相手に裁判を起こそうとして弁護士を探したが、結局本物の弁護士を探し出せないまま、ドラマで弁護士役を演じていた仁太郎に白羽の矢が立った。彼はお調子者で信乃(鈴木京香)に良い格好をしたいために自ら墓穴を掘って、後には引けなくなってしまった。

 一方、幸田順平(浜田雅功)は写真週刊誌のカメラマンである。芸能人やスキャンダルを追いかけ回す毎日だ。ある芸能人同士のデート現場を野球場で撮影し、写真誌に掲載された写真に、一般人の女性、日浦梨紗が写っていた。その女性は和久井映見が演じている。彼女はこの時点ではデパートの事務職だった。会社を病気と偽り早退したにもかかわらず、本当は野球観戦に行っていたことがこの写真で会社にばれてしまった。この事の影響は大きく、彼女は転勤を命じられ、会社を辞めてしまう。ドラマ「Friends」の始まりはこうであった。

 今クールの2つのドラマについて紹介したが、これらにはある共通点がある。全く見知らぬ者同士が出会い、一方の人生が大きく変化したことである。仁太郎は村役場の忠(香取慎吾)に「お前と出会ってろくなことがないよ」と言う。仕事はうまくいかず、愛人には浮気され、家に戻れば離婚を前提に妻に追い出されてしまう。同様に梨紗も順平に写真を撮られてから、会社を辞めることになるし、恋人にも振られてしまった。順平は言う、「あの写真は単なるきっかけなんや」と。ドラマの設定の面白さはこのきっかけにあると思っている。この先もちょっと楽しみ。前者は喜劇、それに対し、後者はシリアスだけど。浜ちゃんの病はどうなることか?。