第441話 ■懐具合

 昨年末に会社よりお年玉をいただいた(ボーナスとは別)。それは今も手付かずの状態で私の銀行口座で眠っているが、たかだか一〇万そこいらの金でこんなに心豊かになれるとは思いもしなかった。何よりも使いみちが決まっていない臨時収入というのが良いし、金額的に何かしら思い切った買い物ができそうなところもうれしい。別に通帳を眺めて、毎晩ほくそえんでいるわけではないが、貯金が趣味でお金が貯まっていくことで心豊かになれる人は、きっとこんな感じなのかな?、と思う。

 今日までその金に手を付けないでいるのは、ある程度金額がまとまっているからに他ならない。これが数万円だったら、年末のどさくさに紛れて、即使ってしまっているに違いない。しかし、今回は買いたいものをいろいろ考えるだけでも楽しめる。それで、一ヶ月半が経った。何とかノートパソコンが買えないものか探してみた。やはりこれには少々足りない。それならWindowsのノートパソコンではなく、Windows CEのマシンにしようかと思う。最近、シグマリオン(第四一〇話参照)を買って、実はもう少しハイスペックのWindows CEマシンが欲しくなっていた。

 早速値段を調べると秋葉原の店頭価格ではちょっと足が出てしまう。インターネットで調べたらそれよりも安く、若干のお釣りが出るショップが発見できた。しかし、秋葉原で実機を触ったところ、思ったより画面の文字が小さいことが気になった。本体は出来るだけ小さい方が良いが、解像度は高い方が良い。結果として、画面の文字が小さくなるのは当たり前のことである。買うべきかどうか、ちょっとためらってしまった。そんなとき、そのマシンのインターネット通販での最安値を知らせるメールが届いた。なんと秋葉原価格に比べて三万円安い。急にそわそわして来た。

 一度は買うのを見合わせたが、この価格なら買っても良いかな、という気持ちに一気に傾いた。しかし、一晩悩んでいた内にそのショップの在庫はなくなってしまい、インターネット通販での最安値は一万五千円アップ(これでも秋葉原価格に比べると一万五千円安い)してしまった。さすがにこれにはショックだったが、この一日のそわそわ感はそれなりに楽しかった。このことを妻に話したら、妻は「そのお金は自動車税と車検に使うから、取っておいて」と言いやがった。

(秀)