第46話 ■コレクター脱出

 オタクとマニア。一見似たようなもので、その差は微妙であるが、周りの接し方の差はかなり大きい。対象のカテゴリーで区別されるのであろうか?。アイドルやアニメとなると間違いなく、「オタク」と続く。同じコレクションをするにしてもスニーカーとか格好良いものだと「マニア」と呼んでもらえる。音楽はマニア。けど、「楽器オタク」というのもある。車は「カーマニア」であるが、「車オタク」という言葉も存在して判断が難しい。「カメラ」も両方存在しそうだ。

 とある中古カメラ店で嫌味なオヤジを発見した。ライカがど~んと展示されているコーナーで、そのオヤジは別のオヤジに話し掛けてきた。「ライカは何台お持ちですか?」と。普通だったら「どの機種をお持ちですか?」と聞くだろうが。「ライダーキック!(心で私はそう嫌味なオヤジに叫んだ)」。聞かれたオヤジはバツが悪そうに「1台です」と答えた。嫌味なオヤジはさも得意気に、「私は3台です」と語った。ちなみにその頃は私も2台持っていた。一方的に自慢話を仕掛けようとするオヤジを無視して、もう一人のオヤジはどっかに失せてしまった。

 この手の嫌味なコレクターがカメラの分野には多い。カメラショーや中古カメラ市となると、必ずライカをぶら下げて現れる。それは衣装の一部となっているかのようだ。もはや、写真を撮る道具ではなく、アクセサリーや勲章と化している。本当に欲しかった時に買えなくて、歳を取って買ったりするとこうなってしまう。店員は慣れたもので、うまく誉め殺して次を売りつけようとする。客は商品の満足度ではなく、自慢話ができた満足感の代償として金を払っているのだ。もちろんそれは次の自慢話のタネを買っているのでもあるが。時計やカメラは技術がなくても金さえあれば格好が付くからたちが悪い。

 この歳でライカを持っていたら、ろくな老人にならないだろうと思い、お陰で私はカメラコレクション地獄から抜け出せた。既に2台のライカは手元にない。

※「ライカ」とは時計で言えばローレックスのような、ドイツのカメラのブランドである。