第503話 ■交通安全協会

 35歳になった。何とも中途半端な年齢の気がする。さて、誕生日と言えば、数年に一度運転免許の更新がある。今年はその年だった。ちょっと遠いが即日に新免許証の交付が行われ、休日でもやっている免許センターを利用している。最寄りの警察署に行くよりも便利であるが、いろいろと効率や経済効果を考えると無駄なものが目に付いた。

 受付を済ませた後に次の窓口で2,950円分の証紙を買う。窓口の女性は手際良く合計金額が丁度になるように4枚の証紙を差し出してくれる。このときは、まあ良かった。ところが、写真撮影を終えて講習室に向かう廊下で盛んに「交通安全協会」への加入を勧めるおばさんたちが廊下の両脇に5、6人立って声を掛けてくる。このおばさん達は交通安全協会の職員なのか?、それとも公安委員会か免許センターで雇われている人たちなのだろうか?。

 交通安全協会は交通事故の撲滅を目指し、様々なキャンペーンを主催している。理念としては非常に崇高な団体である。ところが、人々から集まった活動費の尋常でない額が本来の活動費用ではなく、そこに勤める人の人件費に化けていないか気になった。盛んに呼び込みをする、あのおばさん達の人件費に使われているとなると、それは崇高な理念を掲げた単なる集金システムでしかない。

 よしんば、あのおばさん達が公安委員会から給料をもらっているとなると、先程買った証紙の代金の中にその人件費も含まれていることになる。そんな人が5、6人もこの瞬間、本来の仕事をしていないことになる。ついでに、さっきの証紙を販売していた人の人件費も含まれていることになる。証紙ぐらい自動販売機で販売した方が効率的だし、コストも安くなるはずだ。

 別にヒステリックになっているつもりはない。こんな話は民間企業にもある。毎月多額な金額を支払っている生命保険料であるが、その保険料がどう分配されているかを知ると多額な保険料が馬鹿らしくなる。結構な金額が人件費なのである。インターネットや通販を利用した保険会社が保険料を低く抑えられるのがその証拠である。しかも、セールスに対する報酬の支払期間は限られているため、しばらく経ったら、姿を見せなくなるか、新しい保険への掛け換えを勧めるようになる。30年契約とか言っておきながら、5年後には掛け換えを勧めるなんざ、こんなナンセンスな話はない。

 そして何よりも、公的機関の外郭団体が官僚などの天下り先になっていることへの不信感がある。交通事故撲滅を願って多くの人が支払っているお金が、例え一部であっても、机(正しくは椅子だけど)に座っているだけの、あるいはほとんど出勤しない天下りの者達の給料として支払われているかと思うと腹が立つ。よって、今回も交通安全協会にお金は支払わなかった。

(秀)