第532話 ■11代目襲名

 先日発表された新型スカイラインにはことのほか落胆した。そして怒った。「おい、おい、これがスカイラインかよ」。きっと、同意見で肯いている人も多いことだろう。遂に伝統の丸テールが消えてしまった。それだけではない。サーフィンラインも消え、直列6気筒エンジンもV型配列の6気筒エンジンに変わってしまった。それに何より、顔つきが違っている。もちろん、格好も良くない。前回のモデルチェンジからわずか3年という、異例のタイミングである。

 日産のWebサイトを見ると、そこには社内でも矛盾が生じている感が窺える。新スカイラインのコンセプトを「原点に帰って、これまでのスカイラインのDNAを活かしたスポーツセダン」と言っているが、スカイラインのDNAがいったいどこに具現化されているというのか?。欠片さえ感じられない。これはスカイラインとして開発された車ではなく、モーターショーで発表されていたコンセプトカー(’99年の「XVL」)にスカイラインと名付けただけに過ぎない。

 モデルチェンジと言うのは、歌舞伎などでいうところの「襲名」に似ている。歌舞伎の襲名においては、親戚や一門の意向よりも、興行主である松竹の意向が大きく影響している。今回のスカイラインの発表をこれに置き換えてみると、松竹の経営が傾き(松竹さん、ご免なさい。たとえ話です)、そこにゴーンというフランス人の社長がやって来た。彼のいろいろな立て直し策で、歌舞伎も元気を取り戻していったが、最も多くのファンを持つ、市川団十郎という大名跡を、伝統などをまったく無視したキャラクター、しかもどこか外人風の顔つきの役者に襲名させてしまった。

 「第11代日産スカイライン」はこうして誕生した。襲名披露(新型車発表会)の案内がディーラーから私にも届いたが、迷うことなく、ごみ箱に放り込んでやった。

 - – – – 多分、明日もこの話題 – – – –

(秀)