第531話 ■キラーコンテンツ

 BSデジタル機器の売れ行きが低迷している。ここ数ヶ月、前月実績割れを続けているらしい。昨年12月の放送開始の頃は物不足だったはずなのにこの有様である。放送局サイドが「受信装置が高いから」と言えば、メーカー側は「番組がつまらないから」と言い合っている。どちらの言い分も正しい。しかし、そんなことを言い合っているだけでは事態は好転しない。噂ではボーナス商戦開始の今頃には廉価版の受信チューナが発売されているはずであったが、「出た!」とか「出る!」という話は聞こえてこない。

 一方、国内のインターネットの環境では急速にブロードバンド時代が訪れた。そんな中、「キラーコンテンツ」なる言葉が聞こえてくる。「ブロードバンドに向けたキラーコンテンツ」なんて言い方をする。しかし、現時点ではそれはありきたりな動画の配信程度でしかない。何も、映画やプロモーションビデオをパソコンのディスプレィで見ることはなかろう。ましてやそれでは金を払おうという気にはなかなかなれない。レンタルビデオ屋へ走った方が良いだろう。そもそもそんなコンテンツはメディアの載せ換えでしかない。

 新しいメディアが出現する度に「キラーコンテンツ」なんて言葉でそれにふさわしいソフト(=コンテンツ)を求めている評論家の様な人がいるようだが、そんなものは、本当は存在しないと思っている。もし本当に「キラーコンテンツ」があるとすると、それはH、エロ、ポルノに辿り着くと思う。出会い系のサイトというのも直接的でないにしろ、人間の性的欲求に根ざしている。ビデオがこれほど家庭に普及した理由もそうだと私は思っているし、デジカメやビデオカメラをそんな目的で使用して人も結構いるだろう。

 BSデジタルでエロ番組を流せば、視聴率も上がるし、機器も売れるだろう。しかし、こんなことが実現するはずもない。キラーコンテンツは「ある」と言えば「ある」が、世間の表向きには「ない」というのが現実的な様な気がする。

(秀)