第637話 ■炬燵は偉い!

 母方の実家には掘り炬燵があった。爺ちゃんはいつも柱のある場所に座って、座ったまま舟をこいでいた。随分昔は確かに七輪が中に入っていて、そして周りにはすのこが敷いてあった。それがいつの間にか、電気式の赤外線ヒーターになっていた。その当時は友達の家にもいくつか掘り炬燵が残っていた。

 炬燵で寝るのは気持ちがいい。しかし、掘り炬燵となると大変だ。第1の姿勢は座ったままの姿勢で上体を後ろに倒す。膝を支点にL字型の格好だ。しかしこの場合、布団が胸まで来ないことが多い。第2の姿勢は対角線に平行に寝る姿勢。これもまた結構疲れる。そして第3は体を中に入れてしまい、膝足立て、うつぶせで上体を出す。大人には苦しい姿勢であろう。掘り炬燵で寝るには、ざっとこんな感じの姿勢になってしまう。いずれも基本的に寝返りがつらい。

 布団や畳という平面を主とした文化にありながら、座るといったスタイルの掘り炬燵はある種異様である。その起源はいったいいつになるのか?。火から距離を置いて身を守る形として登場したのであろうか?。最近はテーブル型の炬燵で椅子に座って使用するスタイルのものまで登場しているが、あれは邪道だ。飯だけ食うダイニングテーブルにその後も座っていてはリラックスできそうもない。第一、寝そべることができない。

 炬燵は偉い!。私をはじめ、多くの人々を和ませてくれる。冬がやってくるのは困ってしまうが、炬燵はそんな私の気持ちも暖めてくれる。できることなら私は炬燵を背負って歩きたいとさえ思っている。そして疲れたらそこに炬燵を降ろしてしばし休憩。通りすがりの人も入れてあげて、蜜柑でも食おうか。

(秀)