第849話 ■すみれSeptember Love

 実はこの曲のタイトルで、去年コラムを書こうと思ったが、時期を逸してしまった。特に何を書くかを決めていたはずではないので、一年後にしても大した影響はない。かえってそれで、この曲がリリースされて丁度20年と、区切りの良いタイミングになった。

 言うまでもなかろうが「SHAZNA」ではなく「一風堂」である。その年の秋、カネボウ化粧品のCMソングとしてテレビで頻繁に流れていた。テレビの「ザ・ベストテン」ではヨーロッパ(イギリス?)からの衛星中継で出演したりしていた。初めてその(土屋昌巳の)風貌を見たときの感想は、「研ナオ子に似ている」だった。既にテレビの音声多重放送も始まっていたため、「ザ・ベストテン」もステレオ音声で放送されていたと思うが、あいにく我が家のテレビはモノラル音声であった。

 この「すみれSeptember Love」のヒット直後、その曲を収録したアルバム「Lunatic Menu」がリリースされている。もちろんそれはアナログレコード盤だ。このレコードを買って、初めて針を下ろして聞いたときには電気が体中を駆け巡った。巧みにトラックダウンされ、イントロが左右のチャンネルからディレイ(時差のあるエコー)が掛かって湧いてくる。初めてステレオ音声で聞くこの曲に感動した。それにステレオ音声ゆえに音域も広く、音の層も厚い。曲のエンディングも左右のチャンネルに音を振り分けながらフェードアウトしていく。

 曲のサビの部分はモノラル音声でも音が前に出るように音の周波数(の組み合わせ)に配慮がなされていたらしい。だからテレビCMでのあのフレーズが長い時間耳に残っているだと思う。多分今聞いてもそれほど古さを感じることのない曲だと思う。それでもあの頃から早20年の歳月が経ったことになる。「あの曲が流行っていたのはあの頃」という記憶がある。9月が来るたびにこの曲を思い出し、当時を振り返る。20年だから、ふた昔か?。私は多感な高校一年生だった。

(秀)