第915話 ■大晦日の記憶の断片

 大晦日の慌しさも年を追うごとに薄れてきた。この日は朝から大掃除、それが終わると食料品の買出しに連れて行かるのが、私の子供頃の大晦日のスケジュールだった。どこの家もほぼ等しく、その中でも商売をやっている家の子は店を手伝わされているか、邪魔にならないように遊びに出されていた。

 街に出ると、スーパーは大混雑。その一方で、既に休暇になっている店もあり、またせわしく初売りの準備をしている店もあった。買出しと言っても、おせち料理は毎年仕出屋に頼んでいるので、それほど大量なものではない。私はお菓子を買い込む。

 家に帰ると、父親が鏡餅を飾り付け、壁のカレンダーも新しいものに取り替えられていた。おせち料理が届いている。早速眺めて、明日何から食べようか思案する。しかし、そんなことよりも最大の関心事はお年玉であった。ヤクルトも三賀日分のパッケージとカレンダーが届いている。そして、いつもよりも早く銭湯に向かう。

 母は正月の準備が一通り終わると、いそいそと美容院へと出掛ける。別に正月に着物を着るわけでもなく、せめて実家に帰る際に多少は良い格好をしていきたいという思いである。昔はこんな感じで大晦日には美容院が結構混んでいた。今はどうなのだろうか?。しばらくすると、ヘアースプレーのにおいをプンプンさせて戻ってくる。テレビではレコード大賞が始まり、やがて紅白歌合戦へと続く。

 大晦日の雰囲気が薄れていくにつれて、これら歌番組の力も年々衰えて来ている。今ではCMや出場歌手が変わる毎にリモコンであれこれチャンネルをいじってしまう。こっちの方はむしろ以前よりもせわしくなった。バイトでこの時間まで働いている頃もあったが、はやり大晦日はコタツで迎えるのが私にはふさわしい。みなさん良いお年を。来年は良いことがありますように。

(秀)