第959話 ■天網はいかに?

 「警察24時」などと銘打ち、警察の活躍ぶりをドキュメンタリータッチで紹介するテレビ番組が年に4、5回は放送されているのではなかろうか。別にビデオに録ってまで見るものではないが、他に見る番組もがなく、見始めてしまうと、中座すると後味が悪く、ついつい見続けてしまう。だいたい登場してくるのは交通警察と交番勤務が多く、これに加えて生活安全課といったところ。

 交通警察の場合は(飲酒)検問と暴走族対策、それにひき逃げというのが定番だ。そんな中、先日(と言っても数ヶ月経っているようだが)見た放送では、その内容が悪用されはしないかと心配になった。例の如くひき逃げ事件が起きて、警察が容疑車両を割り出している最中に自動車の盗難届けを出しに来た男がいた。車が盗まれてから既に数日が経っている。そしてその盗難車は事故現場に残された遺留品から割り出された容疑車両と同じ車種のものだった。ここで妖しいと思ったのは腕利きの捜査官(警部)だけでなく、視聴者のほとんどがそう思ったに違いない。番組の構成上、全く関係ない話がテレビ取材に登場してくるはずはない。

 警部は部下に命じ、この盗難を届けてきた男を四六時中尾行させた。一方、盗難届けの出ていた車両をパトロール中の警察官が見つけ、捜査官らがその車両を見に行くと予想通りその車に事故の跡があり、遺留品(パーツ)を合わせてみると、件の加害車両であることが裏付けられた。そこで警察は尾行を続けながら、この車両のそばで張り込みを続ける。そして車のことが気になり、加害車両のところに現れた例の男を逮捕した。彼は証拠隠滅のために消火器を持って、それを車の中にぶちまけようとしていた。

 番組的には目出度し目出度しだが、これを見ていて悪用する者が出て来やしないか心配でたまらない。まず、車が心配で様子を見に行ったがために捕まったわけで、捕まると判っていたらそこには行かなかっただろう。同じように事故後に盗難届けを出して、車を見に行かないとすれば?。また、警察が容疑車両を発見する前に、車両をもっと破壊するなどの証拠隠滅を図る奴が現れやしないだろうか?。いや、そんなことは私の杞憂に過ぎないだろう。天網恢恢疎にして漏らさず。そう願いたい。

(秀)