第964話 ■永沢くん症候群

 「サザエさん症候群」なる言葉があって、これは日曜日の夕方にサザエさんを見終わると「これで休みが終わった」と憂鬱になる人が多いという話だ。さすがにこの時間となるとこれから何かやったりするにはちょっと具合が悪い。やり続けていたことも片付ける頃合だ。「そして明日からまた仕事(学校)だ」という気持ちになるのは私も確かに同じだった。しかしこれはサザエさんのせいではない。彼女にとっては迷惑な話だなあ。

 しかし最近、私にはこの憂鬱を打ち消すような症候群が現れた。その名は「永沢くん症候群」。ちびまる子ちゃんに出て来る、彼女のクラスメイトのキャラクターだ。玉葱みたいな顔の形で頭が尖がっている。頭髪はその先端部分のみ。通学途中などには野球帽がその先端にちょこっと載っている。

 アニメ「ちびまる子ちゃん」は「踊るポンポコリン」の曲で始まる。曲にあわせてパレードの如く、パレードカー(?)に乗ってキャラクターが現れる。先頭はまるちゃんとたまちゃん。その後に永沢くんはピン(一人)で現れる。ピエロのような衣装を付け、目を閉じて曲に合わせ、気持ちよく踊っている。そこに丁度、歌詞に合わせて彼のパレードカーの大きな鍋の蓋が飛ぶ。その瞬間彼は驚いてドタバタする。

 その間わずか3、4秒の間でしかないが、彼の姿に私は癒され、「今週もまた明日からがんばるぞー!」という気持ちになれる。このシーンを見るために、その前に入浴中であれば浴室内の時計を気にし、夕食中であれば箸を止めて彼の登場を待っている。ビデオに録って見ても御利益がない。生で見ないと元気は湧いて来ない。よって日曜日の18:00:20頃、我が家族はテレビを凝視している。

 こんなことをやっているのは私だけだろうか?。多分そうだろう。しかし、明日からのエネルギーを感じる人はなくても、多少癒されている人がいるとは思う。ここで彼の登場順が不自然なところに注目したい。彼は話の中では地味なキャラクターで、もし映画やドラマのように字幕として登場者が紹介されるとすると、主人公の次は彼女の家族だろうし、友達の順でも花輪君や、ハマジ、丸尾君が永沢君よりも前だろう。ところがアニメのオープニングでは主人公+助演女優(たまちゃん)のペアの次にピンで登場する。まさに主演男優扱いだ。

 ここに制作サイドの意図を感じる。制作サイドは永沢君が好きなんだと。あるいはこのオープニングで視聴者を和ませるキャラとして有効であることを知っていて、ここに抜擢したに違いない。花輪君でもハマジでもいけない。その意図、私は確実に受け止めた(思い過ごしかもしれないが)。このオープニングスタイルがこのまま長く続くことを願う。

(秀)