第1002話 ■遊び場

 本当に最近の子供の遊び場は不足している。別に都会に限った話ではなかろう。農村地や山間部ででもない限り、地方においてでも減少していることだろう。私が生まれ育ったのは確かに田舎だったが、帰省するたびにその街は表情を変え、かつての空き地はどこも家が建っている。

 かつて私がよく遊んだのは路地裏だった。銭湯と大衆食堂の間の車一台がようやく通るような狭い路地裏で達ちゃん(第831話参照)とキャッチボールをした。かくれんぼや缶ケリ、鬼ゴッコを路地裏で楽しむこともできた。他人の家の敷地だろうとそこに隠れこんだりした。また、ちょっと自転車に乗って出掛ければ、児童公園があって、そこでキャッチボールをしようがバットを振って野球をしようが誰も咎めるものはいなかった。

 その公園は今でも残っているだろう。そして、そんな公園なら私の今住んでいる周りにもある。ところがかつて遊んだ公園とは質的には大きく違う。そのほとんどが「野球禁止」となっているのだ。小さな公園のため、そこで野球の試合などできっこないが、その看板の意味はキャッチボールも含めた野球の類ということを指しているようだ。「ならば学校で」、と思っても、校庭はみんなのもの、広く占有してはいけないし、周りで遊んでいる他の子に危険だからという理由で、野球を禁止していたりする。

 空き地や公園、はたまた路地裏ででもキャッチボールをしたことがないような少年が中学校に進んで野球部に入るとは思えない。サッカーもしかり、大人の指導者を戴いたチームで未来のスター選手は育てられているのだろうが、子供達だけで自発的に遊びの中に楽しみながら野球を楽しむようなことが難しくなった。明らかに底辺が狭まっている。20年後の国内プロ野球の衰退は明らかだ。

(秀)