第1278話 ■陽気なギャングが地球を回す

 今週の土曜日(2006年5月13日)に封切の映画であるが、インターネットの試写に応募して当選し、一足先に見ることができた。パソコンの画面となるとテレビのそれより小さいし、映画館のスクリーンとの比較で考えれば雲泥の差であるが、パソコンの前にかじりつき、少しでも大画面の雰囲気で見た。動画のオンデマンド配信などとかなり便利な時代になったもんだ。調子に乗って、2回も見てしまった。

 さて、本作品は伊坂幸太郎の同名小説が原作になっている。他人の嘘を見破れる能力(成瀬:大沢たかお)、正確無比な体内時計(雪子:鈴木京香)、天才スリ(久遠:松田翔太)、それに演説好き(響野:佐藤浩市)のそれぞれの特技を持った4人が偶然知り合い、銀行強盗を行う。響野に言わせれば、銀行強盗はロマンある犯罪ということだ。

 誰にも危害を加えることなく、見事に銀行から約4千万円を盗み出した彼らであったが、逃走途中にその金を別の強盗団に横取りされてしまう。それでもただでは起き上がらない彼らは横取り強盗団への仕返しも兼ねて別の銀行強盗を計画する。

 原作が文庫本になっているため、先にこれを読んだ。その時点で映画の配役が分かっていたため、その役者を意識して読んでみた。そして改めて映画を見てみると、佐藤浩市の演技が実に良かった。弁舌滑らかに銀行を襲撃している数分間に人質に演説をする。実に中身のない話だが、その語り口に引き込まれてしまう。

 映画は92分と短めである。原作本に比べると話をはしょっていて分かりにくいところが多少ある。もうちょっと長くなっても、ストーリー展開をもっと丁寧にして欲しかった。映画と原作での一部話が変わっていて、作者特有の伏線を楽しめる分、原作を読んでみることもオススメしたい。面白い映画だった。

(秀)