第1589話 ■長時間録画モード

 ビデオテープのVHSとβの争いが決着したそもそもの差は録画時間の差にあったと思う。そして一旦VHSが優位に立つと、後は多数に集まるマーケットの働きで、VHSが市場を圧倒してしまった。この録画時間の差だが、どちらも標準は2時間としたが、長時間モードにおいて、βが1.5倍なのに対して、VHSは3倍と差をつけた。世間は画像よりも録画時間、すなわちコストパフォーマンスを選んだ。

 かく言う私も、最初はβデッキを買ったが、次からはVHSを選び、そのほとんどのコンテンツを3倍モードで録画していた。そして時間が過ぎてHDDとDVD、はたまたブルーレイディスクにコンテンツを記録する時代が来た。しかもテレビの画面はハイビジョン化し、サイズも大きくなっている。

 テレビが大きくなって、きれいな画像を見るとなると、従来のビデオコンテンツの画像が汚いのに驚いてしまう。特に3倍モードなんて何度も録り重ねたテープとなると、ノイズもあって、極めて状態が良くない。それでも劣化のことを憂慮し、デジタルデータとしてDVDにダビングした。「なぜ新品のテープに標準モードで録画しておかなかったのか」と後悔したもんだ。

 また、わが家はビデオデッキからDVDレコーダーへの移行が早かった。当時はブラウン管テレビで、画面サイズもそれほど大きくなかった。しかも地上アナログ波。当時、わが家のテレビ番組を記録する際の画質の基準はビデオの3倍モードであったため、HDDに録画する際の記録モードは標準の2倍モードだった。それでもビデオの標準モード程度の画質であったため、むしろ長時間録画ができて喜んでいた。

 ところがハイビジョン大画面テレビがわが家にやってきてからというもの、過去に録り溜めたDVDを見てみたら、またがっかりしてしまった。「長時間モードなどやめてしまおう」とまたしても後悔してしまった。今後、ハイビジョンでコンテンツを残すようになったら、ますます古い長時間モードのDVDの荒さが目立つことだろう。

 これからはブルーレイディスクの時代になるのは間違いないが、依然としてメーカーはハイビジョン映像を圧縮して長時間の録画ができるなどとアナウンスしているが、今度は騙されないぞ。長く残るものほど、後悔も長いのかもしれない。

(秀)