第2061話 ■仮定の問題への想像力

 「仮定の問題ですので、お答えは差し控えさせていただきます」。これは菅総理が官房長時代から何度も口にした言葉で、総理になっても相変わらず繰り返している。これに対して、状況を仮定できないのは総理の資質に欠ける、などといった批判が出ている。

 本当に状況を仮定できないとしたら、確かに総理の器でないかもしれないが、仮定の状況を想像、検討していないはずがない。自分たちですらいろいろと想像するではないか。ただそれを口に出すかは別問題。私の友人に、妄想としか思えないようなことを平気で口にする人がいる。実現の可能性とか、方法論とかどうなっているかと疑う。もちろん、この広言は実現しない。それでいて、「あのとき、ああしておけば良かった」などと言う。そんなことの繰り返し。もはや共感の余地などない。

 総理大臣もいろいろと条件を仮定し、検討をしていて当然である。しかも、秘書官や官僚、それに党なども含め、常人の知りうるよりはるか膨大な情報と分析を以って。ただそれを軽々しく口にするわけにはいかない。軽々しく口にしようものなら、答えないこと以上の批判を受けることになる。問題はこれをどう表現するかだ。冒頭のような言葉を繰り返すことで拒否していてはいけない。事務的に聞こえてしまうのは大きなマイナス。今度は受け手側の想像不足で、「状況を仮定できていない」という間違った判断を与えてしまうから。要は伝え方なのだ。

 原稿を書く方ももっと想像力を働かせて、このあたりうまくできないものか。それと、棒読みではなく、事前の練習をしっかりと。

(秀)