第863話 ■BCL

 今から約25年ほど前に、BCLというのが流行った。流行ったと言っても、当時の中高生を中心としたもので、当時小学生だった私達の年代にはやや蚊帳の外の話ではあったが、ませガキで機械もの大好きの私にはそのBCLとやらがちょっと気になる存在であった。ところで、BCLが何のことだか、当時分からないどころか、今の今も分かっていない。せっかくなんでちょっと調べてみた。「Broadcasting Listener」の略らしい。

 言葉の意味なんてどうでも良かった。「外国のラジオ放送を聞くこと」という程度の理解しかなかった。それは今も変わっていない。ラジオの周波数帯は色々とあって、BCLというと、だいたい短波を指しているらしい。一般的なラジカセでは受信できない。そのためには短波を受信できるラジオが必要で、かなりメカニカルないでたちのBCLラジオが当時は電気屋のラジカセ売り場の横に一角を構えていた。

 何故このBCLが私にとって魅力的だったかというと、それが未体験ゾーンというところが大きい。どこぞと知らぬ外国からの電波を、これまた格好良いBCLラジオ様が受信して、その音を拝聴するということが、文字通り有り難いことに思えた。おまけに受信した旨をその放送局に手紙で知らせると、受信したことを認めてくれる「ベリーカード」なる絵葉書を送り返してくれるというのを本で読んだ。そのベリーカードはきれいな絵葉書で、BCLマニアの中では貴重なコレクションアイテムになっているとも説明されていた。ベリーカードを集めたくなったわけだ。

 そのためにはまず、BCLラジオを入手しなければならない。親戚の家に行ったら、従兄妹がBCLラジオを持っていた。さすがにこっそりと持ち帰るわけにもいかず、ピカピカ光るそのラジオ様を見て、ますます欲しくなった。友達と街の電気屋へ見に行くと、最も安いものでも1万7千円ぐらいだった。あまりデザイン的には格好良くないが、BCLラジオであることには変わりない。丁度季節的には今ごろで、お年玉の皮算用を始めた。

 しかし、結局のところ、その翌年にもらったお年玉で私は「電子ブロック」を買ってしまった。友達もスケートボードを買って、結局私のまわりにBCLにはまったのは誰もいなかった。高々、モノラルのラジオでしかない。熱が冷めてしまうと、買わなくて良かったと思う始末。ところで、「どこの放送か、言葉も分かりもしないところにどうやって手紙を書くんだ?」という疑問が当時からある。マニアの人々はどうしていたんだろうか?。

(秀)